ユーザーの潜在意識を探り、無意識な思考にもアプローチする。

これまでUXを様々なプロジェクトで実践してきて、やはりユーザーの潜在意識を紐解き、それをもとに在るべき体験をデザインすることが重要だと思う。

「人はどんなシーンでどんな思考になり、どんな行動をするのか」ということを深く、より本質的に理解しようとすることで、潜在意識のパターンのようなものが見えてくるのではないかと。

人を深く知るためには、デプスインタビュー。

インタビューやワークショップなど、ユーザーの思考を理解するために様々なアプローチを実践してきた。その中でも思考をより深く理解するためには、やはりデプスインタビューが一番であると思う。また、特にインタビュー実施前の仮説形成や、それを基にしたインタビューガイドの作成がキーになっていると感じる。

インタビュー実施にあたり、おそらくインタビューでの質問項目を考えることは普通に誰もが行なっていると思うが、インタビュー前の段階からユーザーの価値観に対する仮説を設定する。これは数年前から実施してきているアプローチである。

その後、インタビューガイドを作成していくのだが、その仮説をもとにどんなことを質問すべきかを骨格となる軸を設定する。それを手掛かりにデプスインタビューを行うことが非常に重要である。

そのようなインタビュー前の準備を入念に行い、事前情報を自分自身にしっかりとインストールした上でインタビューを行うことで、ようやくデプスインタビューを行う準備が整う。いきなりインタビューしても良いが、それだけではユーザーの深層心理には遠く及ばないのではないかと思う。

ちなみに、デプスインタビューは1〜2時間くらいで、インタビュー対象者の周辺情報も含め、じっくりと様々な行動の理由を紐解いていく。

丁寧なインタビュー結果の分析によって、様々な価値観をあぶり出す。

一人のインタビューが終了したら、その直後に1時間ほどかけて、その人の思考を1枚の模造紙に翻訳していく。

基本的な進め方として、先ずはインタビューで得られたユーザーの声(=事実、ファクト)をポストイットに書き出していく。ポイントとして、「〜だと思う」という書き方ではなく、「〜だから、〜だと思う」といったように、何故そのような行動に至ったのか必ず理由を含めて記入するようにする。また、基本的にはインタビュー中の発言のみを書き出し、そのほか書くとすれば観察して確実に言えることを同様に事実としてポストイットに書き出す。

そして、いわゆるKJ法のような形で似ているポストイットを大体グループ化していく。ここでのポイントは、大体グループ化し、すべてのポストイットを俯瞰し、様々なポストイットの関係性を読み解くことである。

模造紙に貼り出したポストイット全体を見渡し、その関係性(行間)からどのようなことが言えるか、別の色のポストイットで書き出していく。これを「翻訳」と読んでいる。

注意として、KJ法でグループのラベルをつけると思うが、この作業ではそのような工程は行わない。初心者はやっても良いかもしれないが、時間のロスであり意外と無意味な作業なので、作業を効率化させるためには、とにかく翻訳作業に集中することが重要である。

この翻訳作業を通じて、まずは思考やその理由となる価値観を一人ずつ丁寧に分析していく。

価値観のパターンが見えると、思考プロセスが見えてくる。

一人ずつ翻訳作業まで終えると、壁一面模造紙が並んだ状態になる。ここまで進めてきたら、一人ひとり翻訳作業で書かれたポストイットだけを取り外し、そのポストイットをさらにKJ法でまとめていく(このとき、ユーザーの声として書き出したポストイットは取り外さない)。

そして、このすべての翻訳作業で得られたポストイットを分析し、KJ法が完了すると、ようやくユーザーの平均的な思考や特徴的な思考のパターンが見えてくる。そして、それを時系列などに並べ替えるなどして、思考におけるプロセスを分析していくと、どのような思考が行動の序盤で起こり、最終的にその思考がどのように変化し、どんな思考パターンへと変化していくのかということが言語化あるいは図解化されてくる。

この結果は、インタビュー前から分かっていた思考もあれば、インタビューによって初めて言語化された思考、そしてユーザーが無意識に感じている思考まで上手くいけば読み解くことができる。

なお、インタビュー前から分かっていたことも含めて言語化されることも実は重要で、知っているつもりになっていたことをしっかり知るということが全体像を把握する上で基本となるように思う。