ユーザー体験で考えるべき「人」や「コミュニティ」とのコミュニケーション施策。
最近プロジェクトを進める際、ユーザーとのコミュニケーションの在り方がより一層重要になってきているように感じる。これまで対象顧客となるユーザーへのデプスインタビューなどを通じて、ペルソナやカスタマージャーニーマップを検討しながらサービス方針などを検討してきた。しかし、インターネットやSNSが当たり前になり、イベントに関する情報発信が容易になったことから、様々な顧客やステークホルダーとの関係性のデザインがサービス成功のキーになっている。
時間視点やサービス視点に加えて必要なコミュニケーション視点
これまでUXのプロジェクトを実施する際、アプローチとしてカスタマージャーニーマップを作成してきた。
基本的にカスタマージャーニーマップでは、ユーザーのタッチポイントを整理していき、それぞれのタッチポイントでのユーザーの思考や心理、行動を言語化しているが、時間軸の区切り方や検討すべき項目はプロジェクトによって様々である。ユーザーが認知してからサービスを利用し始めるまでの場合や、朝起きてから夜眠るまでの1日の流れの場合もある。
これまではカスタマージャーニーマップにより、時間軸でのユーザーの心理の変化やサービスの提供すべき価値の整理を行ってきたが、最近はコミュニケーションの取り方やコミュニティとの関わり、情報との出会い方や機会への視点がより一層ポイントになってきているように感じる。
ユーザー間やユーザーとビジネスを結びつけるために、制作物ベースでの施策だけでなく、コミュニケーションの取り方による視点が必要になっている。
プロジェクトにコミュニティ形成を盛り込む実験的な試み
昨年6月、Jミルクとのプロジェクトで新規ブランディングに伴うプロモーション活動を行った。
Jミルクでは、6月1日を起点として「牛乳の日・牛乳月間」事業を平成19年度から毎年取り組んでいるのだが、昨年度から戦略設計を改めた。それに伴いロゴなどをはじめとした新規ブランド化・コンテンツ制作を実施したことがプロジェクトのきっかけとなっている。元々ロフトワークへの依頼は、その活動を盛り上げ、認知向上を図るために何らかの施策を実施してほしいということだった。
コンテンツ制作では、SNS告知用の30秒ムービーやリーフレット、ランディングページを実施しようとしていたが、それらを多くの人に認知させ、ブランド化をするための施策を検討する必要があった。
そこでポイントとなったのがミルクファンを中心としたコミュニティ活動の促進である。ランディングページやリーフレットを通じて不特定多数の人に、何となく情報を周知することはできるかもしれない。しかし、それだけでは魅力が伝わりにくく、記憶にもあまり残らないのではないかと考えた。
そして、具体的な活動として、牛乳やチーズ等の乳製品、牛乳パック、牛などの魅力を情報発信しているコミュニティを集め、交流イベントを開催した。狙いとしては、そういった情報発信におけるインフルエンサーを「牛乳の日・牛乳月間」事業の活動の核として考え、酪農乳業関係者や一般消費者が「牛乳の日・牛乳月間」へ興味を持つための情報発信のハブ的な存在になってもらうことを目指した。1年目は実験的に実施しているが、徐々にコミュニティ形成を促進し、最終的には文化形成の域を目指したい。
UXにおいて、コミュニケーションの在り方が問われる
Jミルクのプロジェクトを通じ、単純に紙媒体やWebなどの制作を依頼されたとしても、そもそも認知させるためにどのような施策が必要かを本質的に捉え直す必要があると感じた。特に、多くの人に共感してもらうことが前提として必要で、そのためにはコミュニティの在り方やコミュニケーションの取り方を深く考える必要がある。そのとき、短期的な目標ではなく、長期的な目標を時間軸で捉え、様々な施策がどのように絡み合うと最終的にプロジェクトが成功だと言えるのか、しっかりと目標設定るすることが重要だと思う。
そもそもUXは、「嬉しい」「楽しい」といった感情におけるユーザー体験を向上させることがポイントになっている。単純に何かを作るだけでは、そういった感情的側面を向上させることはできない。
そのため、Webのデザインが古くなった、とりあえずチラシが必要そうだ、といったことでプロジェクトをスタートするのではなく、どのような施策をユーザー体験に落としこむかということに対して本質的に見直す必要がある。そのなかで、コミュニケーションやコミュニティといったことが、UXにおいてますます重要な視点となってくるように感じる。
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