UXデザインの一つとして重要な編集力。

様々な情報が溢れているなかで、発信する情報がどのように認知され、興味を持ってもらい、共感してもらえるかが重要になってきている。

またUXにおいて、ビジネス視点からカスタマージャーニーマップやエコシステムを検討することは重要だが、そもそもどのようなユーザーやコミュニティが存在し、どのようにコミュニケーションを取るかが肝心なように感じる。

ユーザーの価値観を理解し、適切な言葉を丁寧に選ぶ。

ユーザーの理解できる言葉とは何かを判断し、専門的過ぎたり、上から目線であったりといったことに注意する必要がある。

例えば、アルトア社で作成したキャッチコピーは、ユーザーへのインタビュー結果をもとに検討している。インタビュー中に10種類ほどのキャッチコピー案をプロトタイプ検証の一つとして行ったが、その結果から融資への不安や借入までの準備や審査の複雑さへ不満を持つユーザーがいることがわかった。そこで、出来るだけ気軽な気持ちで利用してもらえる言葉を検討した。また、融資やローンという言葉は、どちらが好印象かインタビューしていくと、意外と融資の方が評価が高かった。ローンはカードローンのように消費者金融を連想させ、一方の融資は真面目さや信頼感のような安心・安全に関わる印象だということがわかった。

UXにおいて、ユーザーとコミュニケーションする際の言葉の扱いは、一見細かい部分に感じるが、ビジュアル的なデザインと同じくらい重要で、それなりのインパクトを与える要素だと思う。

直球で伝えすぎず、少し疑問を抱かせる程度のフックをつくる。

キャッチコピーなどを考える際、分かりやすさを意識し、あまりに直球すぎる言葉を使ってしまうと、受け手側は情報をスムーズに受け取ってしまう。すると、せっかく検討した大切なメッセージを素通りされてしまう結果になってしまう。

特にキャッチコピーで、そのようなことを注意する必要があり、どのような言葉遣いをするとインパクトを与え、意識を向けてもらえるか入念に検討する必要がある。

そのようなことを仕掛けるための一つのアプローチとして、少し疑問を持たせる程度のキャッチコピーを検討することがある。

例えば、東北福祉大学の最初にユーザーが目にするキャッチコピーは「あたりまえを、越えていく」となっている。

福祉において、あたりまえを越えるとはどういったことなのか?と想像させたうえで、そのアンサーとなる特設ページを作成し、卒業生インタビューの記事コンテンツを交えながら情報を伝えている。

UXにおいて、サービス価値に共感してもらうためには編集スキルが必要。

ユーザーに適切な言葉で分かりやすく情報を伝え、興味・関心を深めてもらうためには、まずサービス価値に共感してもらうことが大切である。

その共感を得るためには、ユーザーの目線を常に意識し、どのような言葉の使い方をすべきかしっかり検討していくことがUXに求められていくと思う。

そのとき、ストーリーとして文脈を伝えるスキルも必要で、いかに解像度の高い情報を具体的に、かつエモーショナルに伝えられるかが重要になってくるのではないかと思う。

それによってユーザーは、初めてサービスの価値に気づき、興味・関心を抱き、共感するといった流れが出来上がると考えている。

そして、サービスやブランドのファンを増やすためにどういった工夫が出来るか今後も模索していきたい。